家族がいるのに「直葬(火葬式)」を選んだ話|お通夜もお葬式もしないって、いいの?
2026.05.21 / 生活

もしもの時の葬儀屋さんの話 第2回目
父を見送るときに、私たち家族が選んだのは、お通夜もお葬式もしない「火葬式」という形でした。
事前相談で、2社の葬儀屋さんに自宅へ来ていただきました。
「火葬式を考えています」と切り出すと、どちらの会社の方も、最初は揃ってキョトンとした顔。
えっと……家族葬、ですか?
(告別式を家族だけでやる、というご希望ですか?)
違うんです、お通夜も告別式も、しないんです。
そうお伝えすると、どちらの会社さんも、若干びっくりされていました。
——え、葬儀屋さんでも珍しいの?
正直に書きます。私自身も、最初は「えええ、そんなのいいの??」と思っていた一人です。
でも、何日も何日も考えて、運転しながらも考えて、最後にたどり着いたのが、この形でした。
どうしてそこに行き着いたのか、ぼちぼち書いておきます。
私の中の「お葬式」のイメージ
数年前、祖母が亡くなりました。
叔父がきちんとアレンジした、いわゆる「ザ・お葬式」。
家族だけのお別れだったはずなのに、巨大な祭壇に、白菊を中心とした堂々としたお花のアレンジメント。
お通夜があって、告別式があって、お焼香があって、そのあと火葬。
気がついたら、流れるように祖母とのお別れが終わっていました。
悲しむ間もなく、決められた段取りに沿って、一日が過ぎていった。
これが、私の頭の中にあった「お葬式」のイメージでした。
父のときに、何日もかけて調べてみた
父は、しばらく前から、あまり長くないとわかっていました。
だから時間をかけて、少しずつ準備を進めることができました。
Googleで何日も検索しました。
- 祭壇って、どのくらいの大きさが普通?
- お花は、いくらくらいするの?
- 葬儀全体で、いくらかかるの?
- 家族葬って、何人くらい?費用は?
調べれば調べるほど、わからなくなる。
そして、何日もかけて調べてたどり着いた素直な感想は、これでした。
なんで葬儀って、こんなに高いの??
家族葬と書いてあるプランでも、ふつうに100万円を超える。
父は「お葬式はしないでいい」と言っていた人です。質素にぼちぼち生きた人。
頭の中をぐるぐる回っていたのは、こんな声でした。
え、これで100万円??
……お父さん、きっと「もったいない」って言うよなあ。
運転しながら気づいたこと
ある日、運転しながら、ふと考えました。
亡くなってから火葬までの時間って、家族と一緒にいられる最後の時間なんだよな、と。
その大事な時間を、お通夜・告別式でのお客さんへの対応で終わらせていいのだろうか?
- 受付に立って、頭を下げて
- 「このたびはご丁寧に」と挨拶を繰り返して
- お焼香の順番を気にして
- お礼を言って、お見送りして
気を使うことばかりで、気がついたら火葬の時間が来てしまう。
祖母の時のように、また「流れるように」終わってしまう。
それは、父が望むことなんだろうか?
答えは、すぐに出ました。
望まない。父は絶対に望まない。
「家族だけで、静かに送ってくれればいい」と言った父が、私たちにあげたかったのは、きっと、家族で過ごす最後の静かな時間だったんだと、運転しながら気づきました。
だから、お通夜も告別式も、なくすことにした
お通夜も告別式もなくせば、その時間を家族それぞれのお別れの時間として使える。
- 仕事の合間に帰ってきた家族が、ひとりで父のそばに座る時間
- 孫が「ただいま」と話しかける時間
- 母が、いつも通りに父にお茶を入れる時間
- 私が、思い出話を独り言のように喋る時間
- 兄弟それぞれが父に伝えたい思いを伝えられる時間
家族みんなが、自分のタイミングで、自分の言葉でサヨナラを言える。
斎場の決められたスケジュールの中では、絶対にできなかったことです。
キョトンとしている葬儀屋さんに、私はこう伝えました。
火葬式にしたいのですが、火葬までの日にちを少し長く取りたいんです。
みんな忙しいので、父が亡くなったら自宅に安置して、家族が仕事帰りなど、いつでも来られて、最後の時間を過ごしてほしくて。
そうすれば、小さな甥っ子や姪っ子も一緒に過ごせますし。
……いつもみんなでゆっくり過ごしたリビングで、最後の時間を、リラックスして過ごしたいんです。
家族みんなが喪服を着なくても、パジャマでもノーメークでも父のそばにいることができるようにしたいです。
言葉にしてみたら、自分でもびっくりするくらい、はっきりとした希望が出てきました。
何日も運転しながらぐるぐる考えていた答えが、ちゃんと自分の中で固まっていたんだなと、その時に気づきました。
そもそも「火葬式」って何?
ここで、念のために言葉の整理。
「火葬式」または「直葬(ちょくそう)」と呼ばれる送り方は、ざっくりこういう形です。
- お通夜なし
- お葬式(告別式)なし
- 亡くなったあと、自宅または葬儀社の安置施設で過ごす
- 火葬の日に、家族だけで火葬場へ行く
- そこでお別れをして、火葬する
コロナ以降、直葬を選ぶ人は増えているそうです。
ただ、葬儀屋さんに聞いてみると、その多くは「ご家族が遠方にお住まい」「身寄りの方が少ない」など、何かしら事情があってのケース。
でも、我が家は違いました。
家族はみんな仲が良くて、父は穏やかなですがいつも家族の真ん中にいた人。
孤立していたわけでも、家族と疎遠だったわけでもない。家族みんなから愛される人でした。
むしろ、家族みんなに大事に思われていた父だからこそ、お通夜と告別式じゃない形を選んだのです。
私たちのように、家族がちゃんと集まれる状況なのに、あえてお通夜も告別式もなくすというのは——
やっぱり、まだ珍しいんだそうです。
葬儀屋さんが最初にキョトンとしたのは、たぶんそういうことだったんだなあと、あとから腑に落ちました。
「お葬式しない=何もしない」ではない。
「お葬式という儀式はしない、でも、家族でちゃんとお別れする」が火葬式。
——ここまでが、我が家が火葬式という形にたどり着くまでの話。
実際にやってみてどうだったか、予想外だったことなどは、また別の記事に、ぼちぼち書いていきます。
意外と父の火葬式やその後のことについては備忘録で残したいことがいっぱいあります。
未来の私へ(備忘録)
えっ、お通夜なし、お葬式なしって、できるの?!?!
はい、できます!! 葬儀屋さんに希望をちゃんと伝えよう!
そして、結果的に我が家流火葬式は家族みんながかなり満足した形になりました。
葬儀屋さんに「えっ?」とキョトンとされても、大丈夫。
ちゃんと言葉にして伝えれば、ちゃんと一緒に考えてくれる葬儀屋さんはいます。
どなたかの参考になると嬉しい。
あわせて読んでね → もしもの時の葬儀屋さんの話
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